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ロジスティクスレポート No.13

景気後退下、荷主企業の物流への取り組みは変わったか
~日通総研アンケート調査にみる荷主企業の動向~

  • 日通総研が実施したアンケート調査結果によると、今回の景気後退を機に、物流を重要な経営課題と認識している荷主企業が増加していることがうかがえる。
  • しかし、物流合理化の一環としての物流アウトソーシングや物流関連投資における物流改善・合理化投資は増減が拮抗している。
  • 一方、環境対策や安全対策等に対する投資は増やしている荷主企業が多く、モーダルシフトへの取り組みを強め、高速道路料金が下がっても、高速道路の利用増には慎重である荷主企業が多い。
  • 輸出入に際しては、利用輸送機関を航空から海運へとシフトする動きは確実に進展している。
  • 国内出荷量が本格回復する時期は、2010年度以降と考える荷主企業が圧倒的に多く、景気後退局面が長期化する状況下で、物流の経営上の位置づけは高まったものの、その取り組みは、従来のように合理化、コスト削減等には向かわず、コンプライアンス志向が高まる中で、環境対策や安全対策等に向かう姿勢が強いことが鮮明に浮かび上がっている。
 

2007年11月から続く今回の景気後退局面も早20ヶ月が経過した。一部には景気の回復に向けた明るい兆しも現れ始めてはいるものの、輸出ならびに設備投資等の回復、ひいては生産の本格回復にはまだ時間を要するものとみられる。また、雇用環境の悪化等により、個人消費についても低迷から抜け出す糸口が見いだせない状況にあり、先行きは決して明るいものではない。一方、深刻化する地球環境問題等を受けて、環境対策は荷主企業にとっても喫緊の課題になるとともに、コンプライアンスを重視した経営が時代の責務ともなっている。
このような状況において、荷主企業は物流に対する取り組みを変えていないだろうか。今般、日通総研では荷主企業の物流への取組状況を確認するため、緊急アンケート調査を実施した。(1)

図-1
図-1.荷主企業における物流の位置づけ
(2005年6月調査)
図-2
図-2.荷主企業における物流の位置づけの変化
(2009年6月調査)

日通総研では、今回に先立ち、2005年6月にも荷主企業を対象に経営における物流の位置づけを問うアンケート調査を実施している(2)。それによると、物流を「最も重要な経営課題」と位置づけている荷主事業所が11%、「いくつかある重要な経営課題の1つ」と位置づけている荷主事業所が78%あり、合わせて約9割の荷主事業所が物流を重要な経営課題と認識していた。
今回実施した緊急アンケート調査の結果をみると、景気後退を機に経営に占める物流の位置づけの重要性が高まったとする荷主事業所が36%あり、物流を重要な経営課題と認識している荷主企業がさらに増加していることがうかがえる。しかし、物流の合理化の一環としての物流アウトソーシングは、拡大、縮小との回答が拮抗し、合理化を目的としたアウトソーシングの取り組みは停滞している印象を受ける。
物流関連の投資についても、物流改善・合理化に対する投資は、「増えた」、「減った」が均衡しているのに対し、環境対策・省エネに対する投資と安全・教育に対する投資は、「増えた」とする荷主事業所が多い。景気後退下においても、環境対策や安全対策が物流の最優先課題である姿勢がうかがえる。

 

(1)2009年6月中旬に荷主企業2,500事業所を対象にアンケート調査を実施し、1,089事業所から回答を得た(回答率43.6%)。
(2)2005年6月下旬に荷主企業2,500事業所を対象にアンケート調査を実施し、1,187事業所から回答を得た(回答率47.3%)。詳しくは『日通総研 ロジスティクスレポート No.1 2005.12』を参照されたい。

図-3
図-3 荷主企業における物流アウトソーシングの動向(2009年6月調査)
図-4
図-4 荷主企業における物流関連の投資動向(2009年6月調査)
 

物流子会社の再編や事業譲渡等については、既に実施している荷主事業所14%に対し、検討中とする荷主事業所が19%あり、今後も物流子会社の再編の動きは強まる見通しである。物流合理化も、物流子会社の再編を通して達成しようとする荷主企業が意外に多いことを示唆するものと受け取られる。
一方、鉄道・内航海運へのモーダルシフトの取り組みは、「強まった」とする荷主事業所が14%あり、従前から取り組んでいた荷主事業所の回答が「変わりない」に含まれることを考慮しても、設備投資に対する姿勢と同様、景気後退下にあっても環境対策への取り組みに対しては揺るぎない姿勢がうかがえる。
高速道路料金が下がっても、高速道路の利用は「変わりない」とする荷主事業所が圧倒的に多く、「減った」とする回答が「増えた」とする回答を僅かながら上回ったことも、コスト負担増を嫌う以外に、環境への配慮から、自動車の利用をできる限り控える姿勢が反映されているものとも考えられる。高速道路料金の引き下げは、荷主企業の貨物運送に限っては、高速道路の利用増に対してほとんど寄与していない。 輸出入の際に、利用輸送機関を航空から海運へシフトする動きに関しては、「強まった」とする荷主事業所16%に対し、「弱まった」とする荷主事業所は1%であり、航空から海運へのシフトは確実に進展している状況がうかがえる。背景には、運賃コストの削減の必要が強まったことに加え、RORO船の就航や定曜日配船等により海運の利便性が高まったこと、さらに環境意識の高まりを指摘することができよう。 最後に、国内出荷量が本格回復する時期の見通しを尋ねたところ、「2010年度以降」がもっとも多く74%に達し、次いで「2009年度後半」とみる荷主事業所が23%、「2009年度半ば」とみる荷主事業所が3%であった。
冒頭で記したように、現在、生産面で明るい兆候も現れつつあるが、在庫調整が一巡した側面が大きく、国内外における需要の盛り上がりが当面期待できないことから、生産の本格回復にはなお時間を要するものと思われる。
荷主企業が国内出荷量の本格回復時期の見通しを「2010年度以降」と捉えていることは、今回の景気後退が長期化する可能性が強いことを認識したうえで、これまでに見てきた物流への取り組みを検討していることを示すものであろう。

図-5
図-5 荷主企業における物流子会社再編の動き(2009年6月調査)
図-6
図-6 荷主企業におけるモーダルシフトへの取り組み(2009年6月調査)
図-7
図-7 荷主企業における高速道路利用の動向(2009年6月調査)

このように、景気後退局面が長期化する状況下で、物流の経営上の位置づけは高まったものの、その取り組みは、従来のように合理化、コスト削減等には向かわず、コンプライアンス志向が高まる中で、環境対策や安全対策等に向かう姿勢が強いことが鮮明に浮かび上がっている。

図-8
図-8.荷主企業における航空から海運へのシフト動向(2009年6月調査)
図-9
図-9.国内出荷量の本格回復時期の見通し(2009年6月調査)
【今回実施した緊急アンケート調査の質問項目】
 

問1 貴社の経営に占める物流の位置づけの重要性は変わりましたか。
問2 物流の合理化の一環として物流アウトソーシングの取り組みは変化していますか。
問3 物流関連の投資については、変化がありましたか。
(1) 物流改善・合理化に対する投資
(2) 環境対策・省エネに対する投資
(3) 安全・教育に対する投資
問4 貴社が物流子会社を保有している場合、物流子会社の再編・事業譲渡等を検討していますか。
(保有していない場合は、問5へ)
問5 鉄道、内航海運へのモーダルシフトの取り組みは変わりましたか。
問6 高速道路料金が下がりましたが、貴社では貨物輸送において高速道路の利用に変化がありましたか。
問7 貴社が輸出入を行っている場合、利用輸送機関を航空から海運へシフトする動きがありますか。(輸出入を行っていない場合は、問8へ)
問8 貴社の国内出荷量が本格回復する時期はいつ頃とみていますか。

(担当:経済研究部)

発行|2009年7月24日
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