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ロジスティクスレポート No.11

燃料価格高騰がトラック運送事業に深刻な打撃(2)
~環境が整ってきた燃料サーチャージ制導入・荷主の理解が進む~

  • 軽油価格は平成18年4月に108円/リットルであったが、平成20年8月には167円/リットルに高騰した。
  • 燃料価格の高騰で、トラック運送事業者の営業利益率が、0.08%から-4.6%に落ち込むことになる。
  • 7割を超えるトラック運送事業者が運賃値上げ交渉を行い、一部でも運賃転嫁ができた事業者は51.1%だが、燃料サーチャージを設定した事業者は39.4%にとどまっている(トラック運送事業者調査)。
  • サーチャージ分の負担要請を受けた荷主企業は58.6%。そのうち約4割の荷主企業が何らかのサーチャージ分金額負担に応じている(荷主企業調査)。
  • 国は燃料サーチャージガイドラインを作成、事業者の後押しをするかたわらで大手トラック運送事業者の燃料サーチャージ制導入が進み、中小トラック運送事業者もその導入に取り組む環境は整ってきた。
  • トラック運送事業者はこの機会に燃料サーチャージ制の導入を進め、今後同様の状況が繰り返されても迅速に対応できるようにしておく必要があるとともに、事業の再生産が可能なように運賃体系そのものを再構築することが急がれる。
1.変動が続く燃料価格

金融市場の混乱を受けて原油価格の急激かつ大幅な変動が続いている。これまで原油価格の上昇に伴い国内石油製品価格も上昇し、トラック輸送の燃料である軽油およびガソリンの価格も高騰を続けてきた。代表的なトラック燃料である軽油について平成18年度以降の推移をみると、平成18年4月に1リットル当り108円であったが、平成20年8月には167円まで高騰し、その後9月には159円まで反転、石油情報センターの週次調査では10月14日現在147.5円に下落している。

燃料価格の推移
【図】燃料価格の推移

(注1)ガソリン、軽油とも店頭価格(消費税込み)の全国平均値。ガソリンはレギュラーガソリン。
(注2)平成20年4月は、暫定税率失効により価格下落。
(資料)石油情報センター

2.燃料価格の高騰で深刻な打撃を受けるトラック運送業

(社)全日本トラック協会の「経営分析報告書」(平成18年度決算版)によりトラック運送業の経営状況をみると、1社平均の営業損益は18万円で、営業利益率は0.08%であり、全産業平均の営業利益率4.1%(「平成19年企業活動基本調査速報~18年度実績~」(経済産業省))に比べて極めて低くなっている。また、ガソリン、軽油等の燃料油脂費は3,294万円で、営業費用の15.0%を占めている。保有車両区分別に見ると、21台以上の事業者は営業利益率が0.4%~1.1%(営業損益121万円~1,493万円)とわずかながらプラスになっているものの、20台以下の事業者はマイナス(営業損益-127万円~-143万円)となっており、小規模事業者の経営状況が非常に厳しいことがわかる。

トラック運送事業の1社平均収入・費用・利益(平成18年度)
【表】トラック運送事業の1社平均収入・費用・利益(平成18年度)

(注3)対象事業者数 5,362社
(資料) 「経営分析報告書(平成18年度決算版)」(社)全日本トラック協会

平成18年度に比べて30%以上上昇した軽油価格で、事業者の営業利益が激減

平成20年度に入ってからの燃料価格の動向をみると、平成18年度と比較してガソリン価格が23.2%、軽油が31.7%高騰している。

最近の燃料価格動向
【表】最近の燃料価格動向

(注4) 上昇率:平成20年度平均(9月まで)/平成18年度平均
(資料) 石油情報センター

燃料油脂費以外の費用項目は変わらないものとして、この上昇率に基づき平成18年度のガソリン・軽油を、現在の価格に対応させて推計すると、1社当り燃料油脂費は、3,294万円から4,313万円と1,019万円(30.9%増)増加することになる。これにより、総コストに占める燃料油脂費の割合が、15.0%から18.8%に上昇し、燃料価格の高騰で全体のコストが4.7%上昇することになる。この結果1社平均の営業損益は計算上1,001万円のマイナスとなり、営業利益率は0.08%から-4.6%まで、4.7%も落ち込むことになる。これを保有車両区分別に見ると、全区分で営業利益率がマイナスとなり、特に保有車両数の少ない小規模の事業者の落ち込みが大きくなる。
このように、トラック運送事業者が燃料油脂費の変動(上昇)を経営努力で吸収することは非常に難しい。

3.燃料サーチャージ制の導入の状況
7割を越えるトラック運送事業者が交渉を行う(トラック運送事業者調査)

経営努力の及ばない燃料価格の変動に対しては、燃料サーチャージ(燃料特別付加運賃)制の導入が有効である。
(社)全日本トラック協会が全国のトラック運送事業者に調査した結果(注5)によると、燃料価格高騰によるコスト増分について、主たる荷主に対し運賃値上の「交渉をした」事業者は75.1%で、一部でも運賃転嫁ができた事業者は51.1%を占める。また、これらの事業者における値上率は平均で4.5%となっている。運賃転嫁の方法は、現行の運賃単価自体を値上げする方法が75.8%で最も多く、現行の運賃とは別途にサーチャージを設定したものは39.4%にとどまっている(注6)。
10月6日現在の国土交通省への燃料サーチャージ制の届出件数をみても、4,331社(トラック運送事業者6万2,567社の6.9%)であり(注7)、小規模事業者の多くは取り組みが進んでいない状況にある。
燃料サーチャージ制の導入が進まない理由としては、(1)燃料価格上昇が急激過ぎて交渉が難航すること、(2)導入には荷主の系列物流子会社の理解が必要であること、(3)サーチャージの協議に応じず他の運送会社に運送を依託する荷主があること、(4)元請け事業者が導入しないと下請け事業者が導入できないこと、などがあげられている。これらの結果を見ると、燃料サーチャージの導入を促進させるには、元請け事業者や荷主の系列物流子会社など、関連する事業者も導入を進め、業界全体で取り組みを強めることが必要であると思われる。

保有車両区分別に見た営業利益率の変化(推計)
【図】保有車両区分別に見た営業利益率の変化(推計)

(注5)トラック運送事業者842事業所を対象に実施した「軽油価格の影響と運賃転嫁に関する調査(20年10月)」。回収率64.4%。
(注6)「運賃転嫁の方法」は、複数回答。
(注7)輸送新聞10月13日版による。

要請を受けた荷主企業の約4割が、何らかのサーチャージ分金額負担に応じる(荷主企業調査)

平成20年9月に(株)日通総合研究所が全国の荷主を対象に調査した結果(注8)によると、「物流事業者から燃料サーチャージ分を負担して欲しいと要請があった」と回答した荷主企業は58.6%を占めた。また、これらの要請があった荷主企業の対応を見ると、「要請どおりの金額を負担している」が21.9%、「要請された金額よりは少ない金額を負担している」が16.6%で、何らかでもサーチャージ分を負担した企業が38.5%と、約4割を占めている。さらに、「現在交渉中である」ところは44.6%であった。このように、燃料サーチャージ制の取り組みは徐々に荷主企業に浸透してきており、燃料価格の上昇に対する負担には応じざるを得ないと考える荷主企業が増えていることがうかがえる。

(注8) 荷主企業2,500事業所を対象に実施した「企業物流短期動向調査(2008年10月)」。回収率43.3%。

4.燃料サーチャージ制の導入に取組む環境が整ってきた
国は燃料サーチャージのガイドラインを作成して事業者の後押し強化

燃料価格高騰に対し国土交通省は、トラック運送事業者が燃料サーチャージ制を容易に導入できるように、「トラック運送業における燃料サーチャージ緊急ガイドライン」を作成してホームページで公開した。また導入のための「相談ホットライン」を各地方の運輸局に開設して、事業者からの問合せ等に対応する体制を整えた。10月10日には、燃料サーチャージ制の導入促進対策(第2次)を公表し、中央・地方の経済団体等への働きかけ強化、トラック運送事業者への働きかけ強化、トラック輸送適正取引推進パートナーシップ会議の活用、導入推進体制の拡充強化、公正取引委員会・中小企業庁との連携強化の5対策をさらに実施するとしている。

トラック協会は国へ陳情、大手運送事業者の燃料サーチャージ制導入が進む

(社)全日本トラック協会は7月、経済産業大臣を訪ねてトラック運送事業者の窮状を説明し、元売りによる売り渋りの実態を指摘した上で、石油元売りへの安定供給や、投機主導による異常な原油高の抑制対策について政府の厳正な指導を求め、8月26日には全国一斉に総決起大会・街頭PR行動を展開した。一方、個々のトラック運送事業者では、札幌通運(株)、三八五流通(株)、王子運送(株)、日本ロジテム(株)などの大手事業者に続いて、業界最大手の日本通運(株)も燃料サーチャージ制を導入した。
このように国等が燃料サーチャージ制導入への後押しを進めるかたわら、大手運送事業者の導入も進んできており、未導入の中小トラック運送事業者が燃料サーチャージ制を導入する環境は整ってきた。

5.まとめ

高騰を続けてきた燃料価格は、ここにきて低下傾向が見られるものの、産油国の生産量削減の動き等もあり、今後も燃料価格は以前より高値圏で変動が繰り返される公算が大きい。
荷主の燃料サーチャージに対する理解も深まってきており、導入しやすい環境が整いつつある。トラック運送事業者は今こそ燃料サーチャージ制の導入を進め、今後同様な状況が繰り返されても、迅速に対応できるようにしておく必要があろう。しかし、言うまでもなく燃料サーチャージはあくまで燃料価格上昇分のコスト転嫁に過ぎず、その変動に対しては有効であっても、トラック事業者の事業再生産のための原資になるものではない。燃料価格の下降局面にあっても、なお高値が続くものの、サーチャージ基準割れが視野に入りつつある。価格変動に備えたサーチャージ制の導入を進める一方で、トラック運送事業者は自社の運送原価をしっかり把握し、人材育成、納税、配当などをしても、事業の再生産が可能な営業利益を確保できるよう運賃体系そのものを再構築することが急がれる。
適正な利益が確保されない限り、トラック運送事業の安全運行やコンプライアンス等にも影響が及ぶことは必至である。このため国は、事業者の燃料サーチャージ制の導入を後押しする一方、トラック運送事業者にあっては事業再生産が可能なレベルまで運賃を引き上げる方策を併行して検討することが肝要である。

(担当:経済研究部)

本論は10月15日現在の情報をもとにとりまとめたものである。

発行|2008年10月29日
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