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ロジスティクスレポート No.10

物流施設の賃料はどのように決まるのか
~賃料水準の決定要因を考える~

  • 近年、物流施設が賃貸収益不動産としての性格を強く持つようになり、その賃料水準に対する関心が高まりつつある。この賃料水準の決定要因としては、主に(1)立地特性、(2)施設仕様、(3)需給状況の3つが挙げられる。
  • 立地特性においては、高速道路IC、港湾・空港をはじめとした物流結節点等へのアクセスが決定要因となる。また、労働力の確保しやすさも重視されている。
  • 施設仕様においては、貨物の搬出入スピードが高いスルー型施設のニーズが大きい。
  • 立地特性と施設仕様以上に賃料水準への影響が大きいのが需給状況である。いかに立地特性と施設仕様が優れていても、近隣に同レベルの物流施設が多数密集して供給過剰となっていれば、賃料は高くなりにくい。
1.はじめに

我が国において、いわゆる倉庫、物流センター等と呼称される種類の施設(以下「物流施設」と総称)は、自己所有されることの多い施設だった。だが、2001年頃から海外投資ファンド、海外不動産会社などによる投資の本格化などを契機として、所有と運営の分離が進むと同時に、賃貸収益不動産としての性格も強くなってきた。
このような状況を背景として、近年物流施設の賃料水準に関する関心が高まりつつある。今回は、この物流施設の賃料水準を決定する要因について考察したい。
物流施設の賃料水準を決定する要因は、大別して(1)立地特性、(2)施設の仕様、(3)需給動向の3つになる。それぞれの詳細は以下の通りである。

2.立地特性
(1)地理的条件

物流施設の賃料水準は、全国的には東京、大阪エリア(東京都、大阪府および両都府の周辺エリア)で高くなりやすい。
近年は輸送手段の発達等によって物流施設の集約化が進展し、東京・大阪の東西2拠点体制が主流となってきている。これは、現在の国内輸送に求められるサービス水準が受注日の翌日配送が一般的であり、それを実現するには、東京拠点が東半分、大阪拠点が西半分を分担するのが地理的に合理的なことが多い等が理由である。

(2)高速道路ICへのアクセス

物流施設にとって高速道路ICが近くにあるかどうかは非常に重要である。高速道路ICが近くにあれば、より広いエリアに、より早く輸送を行える。そのため、一般に高速道路ICの周辺は物流施設の賃料が高くなりやすい。

(3)物流結節点へのアクセス

[1]港湾・空港へのアクセス
輸出入貨物量が増加している現在、国際物流の拠点である港湾、空港へのアクセスは物流施設にとって非常に重要となる。ただし、港湾・空港に近いだけでは十分ではなく、輸出入貨物量が多い中国、東南アジアとの直行便の頻度等にも注目しなければならない。

[2]鉄道コンテナ駅へのアクセス
鉄道輸送も船舶同様に、環境面から昨今注目され利用増が見込まれる輸送機関であるため、鉄道コンテナ駅に近いことは、賃料水準の高さにつながりやすい。ただし、その駅から、目的地近くの駅へ直行ダイヤが設定されているかどうかにも注意する必要がある。

[3]路線便ターミナルへのアクセス
近年、貨物の小口化によって、路線便輸送のニーズは大きなものとなっている。これは路線便輸送は多くの荷主の小口貨物を積み合わせることにより、貸切便輸送より低い運賃でドア・ツー・ドア輸送を実現できるシステムであることを理由とする。
そのため、今後の物流施設は路線便ターミナルに近接していることが望ましい。路線便ターミナルまでの距離が近ければ、それだけ受注締め切り時間を遅く設定できることになるからである。

(4)生産地・消費地へのアクセス

生産地と消費地は、すなわち貨物需要の発生地である。そのため、工場が集積したエリアや、人口が集積したエリアへのアクセスの良さは、物流施設の賃料水準の高さにつながりやすい。

(5)労働力の確保可能性

近年は保管・入出庫などに加え、値札付け・検針など、各種の流通加工作業も物流施設で行うようになり、パート労働者の需要が高まっている。したがって、これからの物流施設は、パート労働者の確保に有利な環境にあることが望ましい。

(6)住民問題の発生可能性

労働力確保という点では、住宅地に近い物流施設の方が有利となるが、住宅地に近いということは、交通事故、騒音等に関する住民クレーム、いわゆる住民問題が発生しやすいことを意味する。この住民問題は既存施設の撤退につながることもあるため、物流施設の立地選定においては非常に重視される。たとえば行政が都市計画上の配慮を十分に行う場合、物流施設の集積地と住宅地が混在しにくい地域は、それだけ賃料水準も高くなりやすいのである。

3.施設仕様

(1)規模

施設に対するニーズが増加してきている。たとえば「東京都市圏物資流動調査」(東京都市圏交通計画協議会 平成18年)では、「物流施設の規模は近年開設した施設の方が大きく、在庫圧縮など物流の効率化を背景とした施設の大型化の傾向が表れている」としている(図)。この調査結果は、近年における大規模物流施設へのニーズの高まりを示すものと言えよう。

図 開設年代別の物流施設の敷地面積クラス別構成比
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資料)「第4回東京都市圏物資流動調査(平成18年)」東京都市圏交通計画評議会

このように物流施設が大規模化した理由としては、先に述べた物流拠点の集約化に加え物流アウトソーシングの進展による影響も大きい。

(2)接車バース

近年の物流施設においては、市場動向等に応じて日々頻繁に入出庫を行うスルー型施設へのニーズが高まっている。このスルー型施設では、迅速に入出庫を行うことが必要となり、そのためには、多数の接車バースを持つことが望ましい。 さらに、2階より上の階にも接車バースを設置し、そこにランプウェイでトラックが出入り出来るようにすれば、入出庫スピードは、より速くなる。そのような施設も賃料水準は高くなりやすい。

(3)エレベータ・垂直搬送機

多層階型倉庫において作業効率を高めるためには、エレベータ、垂直搬送機の基数が十分に確保されているかが重要となる。目安として2階以上の階それぞれに1基以上のエレベータ・垂直搬送機があれば、1フロアーでエレベータもしくは垂直搬送機1基を専用で使えることになる。

(4)床荷重

貨物取扱いスペースの床荷重(床がどの程度の荷重に耐えられるか)については、1.5トン/m2が標準的な仕様となってきている。

(5)床高

一般に、入出庫スピードを高めるためには高床式施設が望ましい。施設の床がトラックの荷台の高さに合わせてあれば、トラックの荷台から、そのまま貨物を出し入れすることできるからである。また、輸入貨物の増加によって近年の物流施設では海上コンテナの取扱ニーズが高くなっている。そのため、海上コンテナが接車しやすいように、バースの高さを調節するドックレベラー等の設備が必要となってくる。

(6)柱スパンサイズ

柱スパンサイズ(施設内における柱の間隔)が大きい、すなわち柱の数が少ない施設ほど、保管や作業のためのスペースが大きくとれることになる。近年の物流施設においては、柱スパンサイズが11メートル以上のものも増えてきている。

(7)天井高

物流施設は保管効率を高めるために、住宅やオフィスより天井高が高く設定されることが多い。具体的には、一般的なフォークリフトの荷揚げ能力が4メートル程度であるため、近年の物流センターの軒下天井高は5~6メートルとなっていることが多い。

(8)照度

近年の物流施設では流通加工などの細かい作業や、コンピュータ端末のディスプレイを見るなどの視認作業が多く発生するため、そうした作業場所の照度は保管スペースより高めであることが望まれ、最近は通常のオフィスと同レベルの500ルクスあるいはそれ以上確保されている物流施設も見られるようになってきた。

(9)事務用スペース

近年の情報化の進展により、物流業務を行う施設においても、多数のコンピュータ端末やプリンターなどの機器類が使用されるようになってきた。それらの機器類を設置し操作するための事務用スペースも確保しなければならない。

(10)複数テナントによる分割利用への対応

近年大規模な物流施設では、テナント1社のみではスペースが埋まるとは限らず、複数テナントが分割利用する可能性が高い。この複数テナントによる分割利用に留意した施設は一般にマルチテナント型と呼ばれ、ランプウェイによって各階のテナントが独立した接車バースを保有できるようにした施設、あるいは1つの上屋をタテに分割し(東半分と西半分等)、それぞれの区画に専用の接車バース、荷物用エレベータ、事務所スペース等を用意した施設などがある。

(11)外観

近年は外観デザインに力を入れた物流施設も多くなってきている。これは、特にパート女性の確保に配慮したためである。物流施設は、どうしてもスーパー等商業施設に比べパート女性から敬遠されやすい。そのため、機能だけでなく外観デザインにも考慮し、さらに汚れにくい素材を外壁に使っている物流施設もある。

4.需給状況

以上のように、物流施設の賃料水準は立地特性と施設仕様の2つによって規定される部分が大きいが、場合によっては、それ以上に賃料水準に影響を与えるのが需給状況である。たとえば、いかに立地特性と施設仕様が悪くても、それだけで賃料水準が低くなると限らない。地方の交通の便が悪い場所にあり、施設の仕様も古い物流施設が東京23区エリアの新しいタイプの物流施設と同様の賃料水準となっているケースもあり、これは、そのエリアにある物流施設の数が少なく、供給不足になっているゆえの現象である。
逆に、立地特性と施設仕様が良い物流施設でも、その賃料水準が思ったより高くならないケースがある。これは、その物流施設があるエリアに、その物流施設以外にも多数、仕様の優れた物流施設があり、供給過剰になってしまったことを理由とする。つまり、そのエリアの物流施設に入居したいと思うテナントのボリューム以上に物流施設が建築されてしまった場合、どうしても賃料水準が高くなりにくい。
この需給状況まで考慮した場合、物流施設の賃料水準を高く維持する上で理想的なのは、立地特性が良く、かつ余剰用地が無いエリアということになる。いかに立地特性が良いエリアでも、余剰用地が豊富なら、ライバルも多数進出し、やがて供給過剰となってしまう可能性が高い。だが、立地特性が良く、同時に既に工場や住宅等が密集しているエリアなら、新たな物流施設は建設しにくく、そのようなエリアは、将来的にも賃料が高い水準で維持される可能性が高いのである。

5.おわりに

本論では、物流施設の賃料水準を規定する要因を、大きく(1)立地特性、(2)施設仕様、(3)需給状況の3つに分け、それぞれの基本的な評価基準などを整理してきた。ただし、ここで示された評価基準については流動的な部分もある。たとえば、近年は各地で大規模な震災が発生しており、これを理由として、今後は物流施設の立地するエリアにおける地盤の強固さなどが重視されるようになると考えられる。
また、立地特性については、一般的な評価が低くても、その潜在的可能性は高いというケースもあることに注意が必要である。たとえば、首都圏内陸部にあり太平洋側の港湾からのアクセスが良くないエリアであっても、日本海側の港湾を利用すれば、道路渋滞の少なさと港湾での通関時間の短さによって、トータルでのリードタイムを短くできる場合もある。そのような潜在的可能性にいち早く気づくことができれば、将来に渡って高い賃料が期待できる物流施設の用地を、低いコストで取得できることになる。

(担当:経営コンサルティング部 主任コンサルタント 矢野 裕之)

発行|2008年7月3日
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