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ロジスティクスレポート No.07

同一物流拠点内の所有権別保管の見直し(提言)
~物流効率化に向けて~

  • 物流拠点において、保管されている在庫品の所有権は、例えば同一内企業での製造部門の在庫や営業(販売)部門の在庫、またはメーカー在庫と販売会社在庫といったように、その資産の経理上の帰属先が多岐にわたることがある。
  • このような所有権の異なる在庫品の保管については、一般的に、社内規定や監査人の指導等により、区分して行うことが求められている。これにより、同一物流拠点内でも所有権の帰属先ごとに別途、保管場所を確保する必要が生じるとともに、拠点内での補充移動等、価値を生まない作業を発生させ、物流合理を大きく阻害している。
  • しかしながら、このような所有権の帰属先の違いによって、保管場所を区分しなければならないという法的根拠は存在しない。
  • 本レポートでは、慣行化している同一物流拠点内での所有権ごとの保管区分をなくし、保管スペースの共有化を図り、従来の所有権ごとに行われていた作業を集約することで、物流コスト全体の低減につなげる方策を提言する。
1.所有権別保管区分の実態

同一物流拠点内において、所有権の違いにより保管区分を行っている事例をもとに、現状を分析する。

  1. 同一企業の部門別保管の事例
    まず、製造部門の在庫と販売部門の在庫が、物流拠点に同居している事例を考える。製造部門は工場倉庫を保有しているが、スペースが逼迫し、工場倉庫の在庫を販売部門の物流拠点で保管している事例が一般的に多い。製造部門の製品と販売部門の製品は重複しているが、製造部門サイドより、販売部門と区分して保管するよう求められている(下図参照)。
    同一物流拠点内における製造部門と販売部門の事例イメージ
    【図】同一物流拠点内における製造部門と販売部門の事例イメージ
    このような実態での問題点は、製造部門の保管エリアから販売部門への倉庫内補充の指示があり、その移動コストが高くなっていることである。一般的に、工場倉庫と販売部門の物流拠点が異なる場所に立地していると、工場倉庫から物流拠点への補充があり、その時点で所有権の移転が製品の移動と同時に発生する。同様に、同一拠点内においても、製造部門から販売部門への拠点内での補充という横移動が発生し、それが物流コストを押し上げる一因ともなる。
  2. 複数企業の同一拠点内保管の事例
    販売会社の在庫がメーカーの物流拠点にある事例を考える。このような物流拠点では、メーカー在庫だけを保管することを前提として展開している例が多いが、実態としては、最終消費者からの返品に問題が発生している。
    物流拠点に保管している製品を出荷すると、販社に所有権が移るが、最終消費者から物流拠点への返品では、所有権が販社在庫のままとなる。また、販社が返品在庫から最終消費者へ販売する場合には、返品在庫から出荷するという状況が発生し、実際に区分して保管するという運用を行っている(下図参照)。
    同一物流拠点内におけるメーカー在庫と販社在庫の事例イメージ
    【図】同一物流拠点内におけるメーカー在庫と販社在庫の事例イメージ
    返品在庫は、製品とした上で物流拠点から出荷するため、メーカー在庫の製品と品質上、変わりはない。しかし、作業においては、販社在庫から出荷する場合、メーカー在庫と同じタイミングで出荷するため、通常、1回で済む集品作業を、2つの場所から行わなければならず、出荷作業の生産性低下と、物流コストの増加要因となっている。
2.所有権による保管区分の背景

所有権が異なると、なぜ保管区分を別にしなければならないのか、その背景を考えてみる。企業の成長に伴い組織が肥大化していくと、組織管理が煩雑になるが、意思決定を速めて経営のスピード化を目指したことにより、事業部制、分社化、カンパニー制といった企業組織の変遷を生んだ。各事業部門に権限が与えられ、独立採算制となったことから、個別に損益計算書、貸借対照表を作成する必要があった。このため、倉庫内で事業部門が複数存在する場合、その事業部門ごとに製品、商品を保管することにつながったと考えられる。 異なる所有権ごとに保管を区分してきた理由は以下の2点に整理できる。

同一企業の物流拠点内で事業部門別に保管区分したイメージ
【図】同一企業の物流拠点内で事業部門別に保管区分したイメージ
  1. コスト算出が容易
    同一拠点内でも保管場所を区分して保管すれば、責任範疇も自ずと区分されることになる。また作業自体や、配送料金に関しても、他の事業部門と区分されることから、物流費の算出が容易になることが考えられる。
  2. 監査人による指示
    このような区分保管については、会計監査をつかさどる監査法人の指示があると言われている。監査法人から指示があるということは、実地棚卸の確認時に、他事業部門の製品が混在して保管してあると、どの製品が実地棚卸を行う対象なのかをすぐに確認できないということが理由として考えられる。しかし、前述したように、同一拠点内において所有権が違っても、保管場所を区分しなければならないという法的根拠は存在しない。
3.現状の問題点

同一拠点内で所有権の異なる在庫を別々に保管することから、保管場所の確保や、作業の重複という問題が発生している。

  1. 保管場所の確保
    所有権ごとに保管することから、別途場所を確保する必要が生じる。2つの部門が同居している場合、保管する製品数が3,000アイテム、製品が両者に重複すると仮定すると、単純計算で6,000間口を確保しなければならない。1つの間口に対して複数アイテムを保管することも可能であるが、作業の平準化を考慮すると、集品時において、集品する該当間口で製品を探させないためにも、1つの間口に対し、1つの製品を保管するほうが望ましい。所有権ごとの区分は、保管場所の増加要因につながっている。
  2. 重複作業の発生
    所有権が移動すると同時に、製品自体も移動しなければならないため、実作業を伴い、物流コストを増加させる一因となる。所有権者の移動指示により、製品を集品し、次の所有権者のエリアまで搬送、検品を行うという出荷作業と同様の作業を行わなければならない。事務処理作業についても同じことが言える。
4.保管区分廃止への提言と対策

以上を踏まえて、今後、物流拠点内で保管区分をなくした運用をする上での提言を行い、その際に発生すると思われる問題点とその対応法について考えたい。

  1. 情報システムの活用による所有権区分の実施
    昨今、物流ニーズの高まりにより、企業が持つ従来型の基幹システムでは、対応できなくなっているのが現状である。そこで注目されているのが、倉庫管理システム(WMS:Warehouse Management System)と呼ばれるものである。
    情報システムを用いることで、理論上、所有権の区分を行うことができれば、場所を区分せずに運用することができる。そのためには、基幹システムの総在庫量とWMSの総在庫量との整合を、情報上で行わなければならない。その場合、物流部門が責任を持ち、在庫差異を発生させないために、決算期だけではなく、日々、出荷した間口に対して棚卸を行う循環棚卸や、月次棚卸を行うことになる。
    理論在庫と実在庫との整合
    【図】理論在庫と実在庫との整合
  2. 保管区分廃止の問題点と対応策
    情報システムによる管理を行う場合、以下のような問題点の発生が予想されるため、その対応法を考慮する。
    1. 所有権別の保管量の設定
      保管区分をなくすことは、場所を共有して保管することである。このため、物流拠点に保管する適正な物量を事前に設定しないと、保管場所がある限り、いくらでも保管することができ、過剰在庫につながる危険が高い。よって、所有権ごとに最大保管量を設定する必要が生まれる。事前に設定した最大在庫量を越えた部門に対しては、ペナルティーを加味したより高額な賃料を請求することで、在庫抑制を図ることが可能と思われる。
    2. 所有権別の物流コスト把握
      拠点におけるコストを算出する際の主な項目は、作業費、賃料、配送料の3点である。保管区分をなくした場合、所有権ごとの作業の切り分けが把握できなくなるが、作業費には総作業費を出荷個数等で除し、処理量あたりの単価を算出し、その単価に所有権者ごとの処理量をかけて算出することも考えられる。配送量に関しても同様に行えばよい。
    3. 製品破損時の考え方
      所有権が違っても、製品はまったく同一であるため、製品が破損、品質劣化等を起こした場合、どの所有権の在庫か判別できなくなる。
      製品が破損する時点は、物理的に製品が動く入荷時、出荷時が多い。入荷時においては、所有権ごとに入荷するため問題はない。ただし、出荷においては、異なる所有権の製品が1つの間口に保管されている場合、出荷作業時の破損を発見すると、どの所有権の在庫なのか目視でも情報上でも判別できない。そこで例えば、破損品は川上の製造部門の在庫とする旨の規定を設けることで、販売部門の在庫は減らず、その結果、製造部門への余分な発注が発生しないこととなる。
      上記は、在庫の所有権の考えであって、破損した責任は物流部門が負わなければならないことはいうまでもない。
5.まとめ

会計監査の観点からすると、実地棚卸は監査時の年2回しかない。年2回のために前述した問題点を抱え、それが物流コストの増加の一因となっていることは大きな無駄といえる。
また、物流拠点の運用上、保管区分をなくすということは、特に繁忙期の作業応援体制においてのメリットが大きい。一般的に作業を固定化して組織体制を組むと、ある作業が逼迫し、他の作業組織に応援を要請しても、応援する側として、担当する作業が終わらないと応援することはできないという意識を持つ。保管場所を区分しないということは、作業自体も集約されることになり、作業体制の簡素化、作業応援体制の確保が柔軟になることも期待できる。作業の重複を可能な限り排除することにより、人件費を削減することも可能となる。
物流部門単体でのコスト削減には限界があり、製造部門、販売部門を巻き込んだ全社的な物流コスト削減が必要であり、法的根拠のない慣行を見直し、保管場所の集約や、無駄な作業の排除を行い、物流コスト削減につなげていくことを提言する。

(担当:経営コンサルティング部 伊津野範博)

発行|2007年6月4日
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