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ロジスティクスレポート No.06

燃料価格高騰等がトラック運送事業に深刻な打撃
~トラック運送事業者に多面的な支援が必要~

  • 平成16年以降、軽油およびガソリンの価格が上昇している。トラックの代表的燃料である軽油は、平成18年11月に1リットル当たり115円まで上昇した。
  • 燃料価格の高騰に対し(社)全日本トラック協会は、経済産業省、国土交通省、日本経済団体連合会、各荷主団体に燃料価格の引き下げや運賃面での配慮などの陳情活動を展開した。またテレビ、ラジオ、新聞等のメディアを通じて業界の窮状をアピールした。
  • (社)全日本トラック協会の「経営分析報告書」により、トラック運送事業の経営への影響を見ると、軽油及びガソリンの価格上昇で、トラック運送事業1社平均の営業利益率は、他の条件が変わらなければ、計算上3.1%も悪化し、業界全体で大きな赤字を出すことになる。保有車両台数の少ない小規模事業者ほど大きく落ち込むことになり、影響は深刻である。今後のコスト増の要因も目白押しの状況にあり労働条件の悪化や安全運行体制への影響も懸念され、トラック運送事業の運営自体に様々な影響が出てこよう。
  • 燃料価格高騰分の運賃転嫁は、僅かずつ増えてきたが、全く転嫁できない事業者が59.9%を占めており、まだ転嫁が十分に進んだとは言えない。
  • トラック運送事業者は燃料サーチャージの導入などの取組みを進める一方、事業者の経営安定に向けた多面的な支援策が求められる。
1.燃料価格の高騰が続いている

平成16年以降、原油価格の高騰が続いている。原油価格の上昇に伴い、国内石油製品価格も急上昇しており、トラック輸送の燃料である軽油およびガソリンの価格も急騰している。代表的なトラック燃料である軽油についてみると、平成16年4月に1リットル当たり85円だったものが、平成18年9月には121円まで高騰、足下の11月は115円まで戻しているものの、依然として高止まりの状況にある。

燃料価格の推移
【図】燃料価格の推移

注1) 石油情報センター資料
   2) ガソリン、軽油とも店頭価格。ガソリンはレギュラーガソリン。

2.トラック運送業界は国や荷主団体へ協力を要請

(社)全日本トラック協会は燃料価格の上昇が顕著となった17年4月から、軽油価格高騰に伴う「緊急アクションプラン」を策定し、経済産業省、国土交通省、日本経済団体連合会、石油連盟、全国石油商業組合連合会、各荷主団体などに陳情活動を展開した。石油業界に対しては、軽油価格の引き下げを求め、荷主団体には業界の窮状を訴えた。経済産業省には適正な軽油価格への行政指導を要望し、国土交通省には荷主業界への行政指導を要請した。これに対し国土交通大臣は、17年9月にトラック運送業界が環境面や安全の確保に適切に対応していくには荷主の理解が不可欠であるとして、経団連に対し、トラック運送事業者の運賃転嫁に理解と協力を求めた。また、テレビ、ラジオ、新聞等の一般メディアを通じて軽油高騰の影響、実情などを訴え、業界の窮状をアピールし、やや改善してきたものの、荷主の理解はまだ十分得られた状況ではない。

3.燃料価格の高騰はトラック運送事業の利益を圧迫し、営業利益率は約3%悪化する

(社)全日本トラック協会の「経営分析報告書」(平成16年度決算版)(注1)によりトラック運送事業の経営状況をみると、1社平均の営業損益は61万円で、営業利益率は0.3%であり、全産業平均の営業利益率3.9%(注2)に比べて極めて低くなっている。また、ガソリン、軽油等の燃料油脂費は2,743万円で、営業費用の12.2%を占めている。保有車両区分別に見ると、21台以上の事業者は営業利益率が0.5%~1.4%(営業損益144万円~1,883万円)とわずかながらプラスになっているものの、20台以下の事業者はマイナス(営業損益-104万円~-131万円)となっており、小規模事業者の経営状況が非常に厳しいことがわかる。

トラック運送事業の1社平均収入・費用・利益(平成16年度)
【表】トラック運送事業の1社平均収入・費用・利益
出所)全日本トラック協会「経営分析報告書」(平成16年度決算版)

平成18年度に入ってからの燃料価格の動向をみると、平成16年度と比較してガソリン価格が19.9%、軽油が26.3%高騰している。

最近の燃料価格動向
【表】最近の燃料価格動向

注1)対象事業者 2,490社。
   2) 経済産業省「平成17年企業活動基本調査速報~16年度実績~」

燃料油脂費以外の費用項目は変わらないものとして、この上昇率に基づき、ガソリン・軽油を現在の価格に対応させて推計すると、1社当たり燃料油脂費は、2,743万円から3,446万円と703万円(25.6%増)増加することになる。これにより、総コストに占める燃料油脂費の割合が、12.2%から14.9%に上昇し、燃料価格の高騰で全体のコストが約3%上昇することになる。
この結果1社平均の営業損益は計算上642万円のマイナスとなり、営業利益率は3.1%も落ち込むことになる。保有車両区分別に見ると、全区分で営業利益率がマイナスとなり、特に保有車両数の少ない小規模の事業者の落ち込みが大きくなることが予想される。

平成18年度の上昇率で試算した場合の1社平均収入・費用・利益
【表】平成18年度の上昇率で試算した場合の1社平均収入・費用・利益

これにより業界の利益は消失し、大きな損失が生じることになるが、今後、安全運行体制の維持に影響が出たり労働条件の悪化等につながることも懸念され、トラック運送事業の運営自体に様々な影響が出てこよう。このほか、改正省エネ法の施行や道交法改正による取締り強化に対応するためのコスト負担増なども余儀なくされることに加えて、少子高齢化社会のもとでドライバー不足が顕在化することも懸念されており、トラック運送事業者の経営は四面楚歌の状況にある。

4.それでも運賃転嫁は、まだ十分に進んでいない

(社)全日本トラック協会が平成18年11月に調査した燃料価格高騰に対するトラック運送事業者の対応を見てみると、高騰によるコスト増分について、主たる荷主に対し運賃値上げの「交渉をした」事業者が21.6%、「交渉している」事業者が47.2%で、合わせると約7割の事業者が交渉を実際に行っている。

しかし、運賃値上げ交渉において、燃料価格の高騰分のコストを荷主に転嫁できているかどうかについては、一部でも運賃転嫁ができた事業者が38.9%と、わずかずつ増えてきたものの、「まったく転嫁できない」は依然として59.9%を占めており、まだ十分に進んだとは言えない。このような状況のもと、燃料サーチャージ(注3)導入の動きも現れている。燃料サーチャージは、原油市場の動向が不透明感を増すなか、燃料価格がトラック運送事業者の経営の波乱要因となりかねず、長期的な視点からその導入が望まれるものである。しかし、荷主企業の理解を得るには至っておらず、その導入拡大は遅々として進んでいない。トラック運送事業者は荷主企業へのアプローチや説明の方法などを含め、さらに工夫をこらして取組みを進める必要がある。

注3) 基準となる軽油価格を決め、その基準を一定額以上上回れば走行距離などに応じて算出した金額を運賃に上乗せする仕組み。軽油価格が基準を下回れば調整金を引き下げたり、請求を取りやめたりする。

5.まとめ

燃料価格の高騰問題はじわじわと国民経済、国民生活に影響を及ぼし始めている。足もとで軽油、ガソリン価格は落ち着きを取り戻しつつあるものの、依然として価格は高水準にある。問題は長期化する様相を呈しており、このまま推移すればトラック運送事業は危機的な状況に陥ることになる。
昨今のトラック運送事業をみると、環境問題や安全問題に対応するための社会的なコスト負担が増えている一方、自動車関係諸税は営業用トラック関係だけでも9種類に及ぶ。さらに、トラック運送事業に対するジャストインタイムの要請が強まっており、それに応えるには高速道路の利用も避けては通れない。このように近年のトラック運送事業者を取り巻く経営環境は、様々なコスト負担を余儀なくされ、非常に厳しい状況となってきているが、燃料価格の高騰は、これにさらに拍車をかけるものとなった。
国民のライフラインである物流を担うトラック運送事業者が輸送業務を行い、快適な国民生活を支えていくためには、事業者の経営基盤を安定化していく必要がある。しかしながら国土交通大臣をはじめとする関係者の精力的な協力要請にもかかわらず、運賃転嫁がまだ十分に進んだとは言えない状況にある。道路財源が余剰になれば、軽油引取税等の暫定税率を戻すことが基本と思われるが、トラック運送事業者は、運賃に比べて理解の得やすい燃料サーチャージの導入に向けた取組みを進める一方で、トラック運送事業者の経営安定に向けた多面的な支援策が必要となろう。「高速道路料金の引き下げ」が既に検討されているが、「運転資金の緊急融資に対して信用保証を与えること」、「一般有料道路についても高速道路と同レベルのETC割引を適用すること」なども検討する必要があろう。存亡の危機に立つトラック運送業界には、自助努力により現在の苦境打開に努めることはもちろんであるが、併せて経営安定に向けた多面的な支援策が求められる。

(担当:経済研究部)

発行|2006年12月18日
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